医学研究科 医学専攻脳病態生理学講座臨床神経学 講師
神経疾患を考える上で、神経細胞のみではなく、グリア系、血管系を含めた神経グリア血管単位(Neurovascular unit、NVU)として、脳を包括的にとらえる重要性が提唱されています。実際に、脳血管障害、認知症、神経変性疾患、神経免疫疾患を含む多くの神経疾患において、神経グリア血管単位の機能不全が、病態の発症や進行に密接に影響していることが多面的な観点から示されています。さらに、脳内の神経グリア血管単位と、脳外の各臓器が、免疫系、血管・リンパ管系、内分泌系、自律神経系を介して、双方向性に連関(脳ー臓器連関)し、恒常性維持や各疾患の病態に寄与していることが報告されつつあります。
神経グリア血管単位を構成する細胞の中で、我々はグリア細胞の1つであるオリゴデンドロサイトとその前駆細胞 (Oligodendrocyte precursor cell、OPC)に注目して研究を行っています。OPCはオリゴデンドロサイトの供給源であるということだけでなく、多様性を有し、脳内外に存在する他の細胞種と様々な相互連携をしていることが報告されてきています。
今後は、脳-臓器連関に着目し、各神経疾患において、OPCが脳内外の他の細胞種とどのように相互作用し、病態に関与するのかを解明することにより、新しい診断・治療アプローチの創出につなげていきたいと考えています。