医学研究科 附属がん免疫総合研究センター がん免疫多細胞システム制御部門 准教授
kyoto-u.ac.jp<研究経歴>
理化学研究所 生命医科学研究センター 免疫転写制御研究チーム
生物の設計図であるゲノム情報がいかにして読み出され、精緻な生命システムを構築するかという「遺伝子発現制御の根本原理」の解明に従事しました。谷内一郎チームリーダーのもと、転写因子複合体の機能解析およびクロマチン高次構造の動態解析に注力し、免疫細胞(T細胞)への分化と活性のプロセスを分子レベルで明らかにしました。この期間に、遺伝子改変マウス作製技術と分子生物学的実験手法(Wet)に加え、ChIP-seqやATAC-seqなどのエピゲノム解析とバイオインフォマティクス解析(Dry)の技術を習得しました。自ら仮説を立て、検証のためのマウスモデルを作製し、最先端のゲノム解析で答えを導き出す「シームレスな解析する研究遂行能力」は、現在の私の研究の核となっています。
名古屋大学 医学系研究科 分子細胞免疫学
理化学研究所で培った基礎知見を「疾患における分子機構の破綻」へと展開させるため、名古屋大学・西川博嘉教授の研究室に合流しました。同研究室では、がん微小環境における細胞機能不全(疲弊)のメカニズムを、転写制御とエピジェネティック変化の観点から解析しました。特に、臨床検体の解析から得られた知見に基づき、症例の遺伝子発現を忠実に再現する独自の疾患マウスモデルを自ら作製・解析する、独自の応用的基礎研究を展開しました。さらに、この研究過程で見出した「神経系と免疫系のクロストーク」に着目し、若手新分野創成研究ユニット(文部科学省・研究大学強化促進事業)を立ち上げ、ユニットリーダーを務めました。「老化・神経・免疫ネットワーク研究ユニット」では、異分野の研究者を結集させた学際的なチームを主導し、老化による免疫機能低下(免疫老化)の分子機構解明を目指して、マウスモデルを用いた多角的な検証を行いました。
<現在の研究内容>
京都大学 がん免疫総合研究センター がん免疫多細胞システム制御部門
2025年度より、本庶佑先生が創設した京都大学がん免疫総合研究センター(CCII)にて、がん免疫多細胞システム制御部門の准教授に着任し、西川博嘉教授の下で研究を継続しています。こちらでは、がん免疫を単一細胞の解析に留めず、個体レベルの「多細胞システム」として捉える新たな接近法に挑戦しています。私の強みは、臨床検体のオミクス解析から得られた知見を、自ら作製する精密な疾患マウスモデルで再現し、機能実証を行う一気通貫の解析スタイルです。現在はとりわけ、がん免疫を分子レベルの解析に留めず、概日リズムや加齢といった「時間軸」の視点から理解する「時間免疫学」の確立に注力しています。これらの研究を通じて、臨床現場の問いを科学的に解明するトランスレーショナルリサーチ(TR)を推進し、がんの治療のみならず、将来的ながん予防を実現できる世界の創造に貢献したいと考えています。
京都大学創発 PI (JST創発的研究支援事業 塩見パネル)
https://www.jst.go.jp/souhatsu/research/panel_shiomi.html
JST創発的研究支援事業では、「領域特異的解析による転写ファクトリーの分子実体と機能の解明」に取り組んでいます。複数の遺伝子が核内の特定領域に集まり、効率的な転写制御を受ける「転写ファクトリー」仮説の分子基盤解明が目標です。 本研究の核心は、領域特異的免疫沈降法(Locus-specific ChIP)を駆使し、特定のゲノム領域に形成される転写複合体を直接捉えることにあります。これにより、従来のChIP-seqのような「平均化されたデータ」では見えない、特定の遺伝子座(ローカル環境)の動態を4次元的に定量することを目指します。本研究による免疫系の転写ファクトリーの解明は、新規免疫チェックポイント分子の同定や評価を可能にするポテンシャルを秘めており、がん免疫研究への応用を加速させています。
<主な研究手法>
遺伝子改変マウスの作製(ES細胞、Crispr/Cas9)
分子生物学的解析(Western Blotting, ELISA)
細胞生物学解析(フローサイトメトリー, RNA-seq, scRNA-seq)
エピジェネティック解析 (ChIP-seq, ATAC-seq, Hi-C)
バイオインフォマティクス (NGSデータ解析)