生命科学研究科 統合生命科学専攻遺伝機構学講座 准教授
京大を定年となり独立系研究者として自由に活動しています。「独立系研究者」という呼称は researchmap が研究者のカテゴリーとしているもののひとつで、これ以外に現在の自分の立場を呼ぶうまい言い方は無いので、それを使わせてもらうことにしました。
京大での研究プロジェクトとしては、スピルリナ(学名 Arthrospira platensis。右の写真)の研究をおこなっていました。
水の中で光合成をおこなって生活している微生物は、サイズが小さく、人の目に触れる機会がほとんど無いため、これまで人類にはあまり利用されてきませんでした。しかし、これらの微生物は人の目に触れないところで多様な進化を遂げており、中には人類にとって有用な形質を持っているものもいます。そのようなものの中で、スピルリナは人類にとって将来きわめて有用になる潜在性を持った微生物です。
スピルリナは多細胞のシアノバクテリアで、もともとはアフリカのチャド湖など、原産地の周辺で食用にされていました。チャド湖の水はアルカリ性で、そこを原産地とするスピルリナも増殖にはアルカリ性の条件を好みます。他の藻類が増殖できないアルカリ性の条件で培養できるため、スピルリナは、屋外で培養しても他の藻類が混入せずに、簡単に一種類の藻類だけで単藻培養を行うことができます。また、サイズが比較的大きいため、濾過で簡単に収穫ができます。このような特徴は産業的な大量培養に好適で、実際、1970年代から産業的な生産が始められて、現在は世界中で食品や食品添加物の原料として利用されています。特によく使われているのはスピルリナが持つ鮮やかな青い色素(フィコビリン色素)で、アイスなどの氷菓に天然着色料(商品名:スピルリナ青)としてよく利用されています。ガリガリ君(赤城乳業)の青い色は、このスピルリナ青によるものです。
スピルリナは屋外の開放型の池で単一の生物種として大量培養を行うことができ、収穫も濾過で簡単にできます。このように産業的な大量生産に適した微生物は他に知られていません。さらに、スピルリナは光合成をおこなって増殖するので、太陽光のエネルギーを利用して二酸化炭素を原料として有機化合物を作ることができます。そのため、将来、サステイナブルな有用物質生産の基盤とするのに、きわめて適した微生物です。
しかしながら、この微生物は基礎的な研究の材料としては従来あまり使われてこなかったため、研究開発を行うための実験系が整備されていませんでした。私たちの研究室では、これまでにスピルリナ(A. platensis)を研究材料として使いやすくするために実験系の整備を進めてきたほか、突然変異体を利用して増殖や形態形成の遺伝的な調節の仕組みの研究を進めてきました。また、この生物の完全長ゲノム塩基配列を解読して、世界の研究者の利用に供しています。このような研究は、この生物を利用して品種改良を行う上での、基盤的な情報を提供するものです。
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生物系の研究とは別に、日本の古典文学に関連した探求も個人的におこなってきました。そのようなことの一部を書籍にするプロジェクトも始めています。