Graduate School of Letters, Division of Behavioral Studies Associate Professor
東洋文献言語学を標榜して研究活動を行なっています。「現在観察することのできるデータから過去の出来事や状態をいかにして知ることができるか」を実証的に探究するのが私の年来の研究テーマです。
中心的な課題は、近年までほとんど未解読であった10–12世紀の契丹文字文献を総合的に読み解き、そこに書かれた契丹語を復元・分析したり、そこに書かれた内容を読解したりする「文字解読」の作業です。これまでに取り組んできた研究内容は、契丹文字(特に契丹小字)の文字体系の復元・分析、契丹語の音韻・文法など言語構造の復元・分析、契丹語とモンゴル諸語との関係を探る比較言語学的研究、契丹文字文献に翻訳・引用される漢文古典籍や漢人典故の同定、契丹文字文献の記述と漢文史料の記述との対応づけ等々、多岐にわたります。
近年は、契丹語の解読とも密接な関わりのある遼代の漢語音を中心に、中国北方での中近世間の漢語音の変遷を捉える漢語(中国語)音韻史の研究にも取り組んでいます。
また最近では、契丹文字文献のみならず、契丹(遼)に関わる漢籍資料にも研究対象を広げています。具体的には、南宋末(13世紀後半)に編まれた葉隆礼『契丹国志』や元末(14世紀中葉)に纂修された正史の一つ『遼史』といった史料をめぐって、その編纂過程や版本・テキストの問題などを文献学的・書誌学的な側面から検討しています。