Graduate School of Agriculture, Division of Applied Biosciences Assistant Professor
kyoto-u.ac.jp昆虫の新しい形の起源を辿る進化発生学研究
昆虫が示す多様で機能的な形は、かっこよく、美しく、おもしろい。地球上最多種数が記載された生物である昆虫は、分節性・六本脚といった体の基本構築を種間で高度に復元する一方で、有翅昆虫の翅や甲虫の角、ハサミムシの尾鋏など、系統特異的に「新しい」形(=新奇形態)を生み出して多様化してきた。これらの新奇形態は、卵から孵った後の後胚発生における、極端な外骨格の変形により創り出される。我々は、外骨格をもつ昆虫に特徴的な、局所的変形による新奇形態の起源とその進化機構を、現生昆虫の発生比較に基づいた進化発生学的方法論により研究している。現在主に2つの現象理解に取り組んでいる。
1. 昆虫における飛翔の起源と進化
昆虫の翅の進化的起源は150年来の謎である。我々は、不完全変態昆虫であるフタホシコオロギにおける翅発生の詳細な調査から、翅が無翅昆虫の側背板に直接由来する可能性を示した(Ohde et al., 2022)。さらに翅の起源を辿るためには、翅獲得以前の体制を示す昆虫の発生を調べる必要がある。この目的のため、無翅昆虫マダラシミでRNAi、ゲノム編集、遺伝子組換えといったツール開発を進めてきた(Ohde et al., 2009; Ohde et al., 2018; Inada et al., 2025など)。現在、コオロギとシミの発生比較から、昆虫飛翔の起源と進化の謎に挑んでいる。
2. コオロギ科頭部進化をモデルとした新奇性獲得の超階層的理解
蛹を作らない不完全変態昆虫であるコオロギは、幼虫から成虫まで全身の体制に大きな変化がない一方で、体の一部を極端に変形して新しい形を創り出す。また、複数種の室内飼育が容易であり、かつ、ゲノム編集や遺伝子組換えといった高度な遺伝学ツールが実装されている。このような特徴に着目して、直接発生過程で多様な頭部の変形を示すコオロギ科昆虫をモデルとした進化発生学研究を進めている(Yoneda et al., 2025)。個体・組織・分子の多階層で変形に伴う変化を測定した上で、階層間の関係性を明らかにして、昆虫の後胚期変形を支配する基礎原理を超階層的に理解することを目指している。
左から、マダラシミ、フタホシコオロギ、ミツカドコオロギ