生命科学研究科 統合生命科学専攻応用生物機構学講座 准教授
【研究】光合成による炭素固定は、無機炭素を有機物へと転換して地球規模の物質循環を駆動する生命活動の核心です。私の研究は、水圏に生息する光合成生物と、その細胞内で相分離して形成されるピレノイドをモデルとして、分子細胞遺伝学、超解像ライブイメージング、ゲノム・マルチオミクス解析、機械学習を統合した多階層解析により、急激に変化する光・温度・栄養条件下でも光合成を柔軟かつ堅牢に維持する分子適応戦略を明らかにすることを目的としています。
相分離オルガネラの形成・消失・継承を司る分子ネットワークを網羅的に同定し、その動態を数理モデルで記述することで、炭素固定機構との統合的理解を進めます。さらに、CO₂濃縮機構関連遺伝子を理論設計して導入・最適化する合成生物学的アプローチにより、相分離オルガネラを高度にエンジニアリングし、光合成能の飛躍的強化や新規バイオマテリアル創製を実現することで、気候変動や食糧不足といった地球規模課題の解決基盤を築くことを目指しています。
【教育】学部教育では、生命科学の基礎概念を「現象の背後にある“なぜ”」に焦点を当てて講義し、実習では観察・仮説・検証のサイクルを体験的に学ぶことで、生物学の魅力と科学的思考の醍醐味を伝えています。大学院教育では、UNIX、R、Python、AI を用いた演習形式の授業を通して次世代シーケンサー由来のビッグデータ解析を実践的に指導し、プログラミング未経験者であっても短期間で自走できるスキルを養成しています。また、英語による最先端生命科学トピックのディスカッションを通じて、国際的研究者に不可欠な批判的思考力と科学コミュニケーション能力を醸成し、実験駆動型とデータ駆動型を統合して新たな問いを自ら発見・解決できる次世代研究者の育成に力を注いでいます。