医生物学研究所 生命システム研究部門 助教
血液内科医としてのバックグランド (血液内科専門医・指導医、総合内科専門医) を生かし、がん生物学の研究を行っています。京都大学大学院医学研究科血液内科学講座 (高折晃史教授)、大阪大学大学院生命機能研究科幹細胞・免疫発生研究室 (長澤丘司教授) を経て、現在は京都大学医生物学研究所幹細胞遺伝学分野 (遊佐宏介教授) で、主として以下のテーマに取り組んでいます。
(1) がん細胞におけるSWI/SNF複合体の機能解析
SWI/SNF複合体はクロマチンリモデリング複合体の1つで、ATPの加水分解によって得られるエネルギーを使ってヌクレオソームをスライド或いは除去することで、オープンクロマチン領域を形成し、転写因子などのゲノムDNAへの結合を可能にしています。一部のがんではSWI/SNF複合体構成要素をコードする遺伝子に機能喪失型変異を認める一方、別の一部のがんではSWI/SNF複合体はがん転写ネットワークの維持に必須です。我々は様々ながん種をモデルに、ATAC-seq、RNA-seq、CRISPR-Cas9技術などを駆使してSWI/SNF複合体の機能解析を行っています。
Aoki et al., Blood 2024; Ueda et al., ongoing project
(2) がん細胞における転写制御因子同士の機能的連関
転写制御因子は互いに協調しながら、遺伝子の発現を制御し、がんの増殖を維持しています。CRISPRスクリーニングなどを使って、がん細胞における転写制御因子同士の新たな機能的連関を明らかにします。
Hyuga et al., ongoing project; Aoki et al., ongoing project
(3) がん細胞とがん微小環境と相互作用
生体内においてがん細胞は、特別な微小環境いわゆる「がん微小環境」によって維持されています。我々は、in situ hybridization技術、遺伝子改変マウス、CRISPRスクリーニングなどを用いて、がん微小環境によるがん細胞増殖維持機構の詳細を明らかにします。
Aoki et al., Br J Haematol 2021; Aoki et al., Blood 2024; Aoki et al., ongoing project